今世界で話題になっている日本の80年代シティポップだという。2020年頃から海外で1980年代のシティ・ポップの人気・評価が高まっています。ビルボードにも登場した。
80年代シティポップがブレーク
竹内まりやの「Plastic Love」(1984年)が海外メディアで紹介されたことや、松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」が世界数十か国の音楽配信サービスで1位にランクインしたことを皮切りに、シティ・ポップ人気が急上昇。日本のシティポップが世界中で話題沸騰している。
韓国のDJ「Night Tempo」によるシティ・ポップのリエディット企画なども追い風になりさらなる盛り上がりを見せています。
今回はなぜ日本のシティ・ポップが海外で人気が出たのかその理由を40年以上シティ・ポップを聴いてきた音楽マニアの私がレポートしてみました。
今80年代のシティポップスの人気
グラミー賞歌手のアルバムにあった日本人の名前
世界的に人気の高いカナダ出身のR&Bシンガー、ザ・ウィークエンド。彼が今年の1月に5作目のアルバム『Dawn FM』を発表した際、大いに話題となった。
彼が新作を発表するともちろん常に話題になるのだが、日本では別の切り口からニュースになったのである。
収録曲のひとつ「Out of Time」である。この曲のクレジットを見てみると、複数名が並ぶソングライター欄に、亜蘭知子と織田哲郎の名前が確認できる。
この『Dawn FM』は米国のビルボード・チャートでは2位という大ヒットを記録した。これほどのヒット作に日本人の名前がクレジットされることはそうそうあることではない。
2021年にレーベルが公式に発表した竹内まりや「Plastic Love」(1984年)のフルバージョン動画の総再生回数は、瞬く間に200万回を記録しコメント欄には英語からロシア語、アジア各国の言葉など世界中から感想が溢れている。
インターネットやユーチューブなどの利用で視聴できる環境が出来上がったのが一番の要因なのかもしれません。誰でも視聴できる環境になったからです。
70年代から80年代にかけて生まれ発展していった日本のポップスで大人っぽいロックやソウルミュージックなどの洋楽に影響受けて洗練された音楽の総称である。
例えば、山下達郎、松任谷由実、南佳孝、吉田美奈子、角松敏生、稲垣潤一などが代表的なアーティストとして挙げられる。
日本ではフォークや歌謡曲が主流だったが差別化する意味でもシティポップという言葉は使われることも多い。
なぜ亜蘭知子の楽曲がサンプリングされたのか
この亜蘭知子の「MIDNIGHT PRETENDERS」は発表当時の1983年によく知られていた曲かというと決してそうではない。
シングル・ヒットしたわけでもなくあくまでもアルバムに収められた知る人ぞ知る一曲でしかない。アルバム自体がチャートに入るようなセールスを収めているわけではなく亜蘭知子もシンガーとしてはかなりマニアックな部類だ。
カナダ出身のシンガーソングライター、ザ・ウィークエンドは、亜蘭知子「Midnight Pretenders」(1983年)をサンプリングした新曲「Out Of Time」を発表。原曲のリズムを活かしたメロウなグルーヴでリリース直後に各サブスクリプションのチャートで急上昇した。
このような日本の楽曲をサンプリングすることは今に始まったことではない。
2014年には、ラッパー兼シンガーとして絶大な人気を誇るJ・コールのアルバム『2014 Forest Hills Drive』に収められた「January 28th」ではハイ・ファイ・セットの「スカイレストラン」(1975年)がサンプリングされていた。
しかもこのアルバムは米国Billboard Chartで堂々の1位を獲得している。
6年前にはすでにザ・ウィークエンド以上の実績を日本のシティポップが成し遂げていた。
また山下達郎の「FRAGILE」を引用したグラミー受賞ラッパーのタイラー・ザ・クリエイター、杏里の「Last Summer Whisper」のイントロ部分をループさせた楽曲を歌うジュヌヴィエーヴなどメジャーだけでなくインディ系も含めるとすでに相当数あり今後も続々と作られていくのは間違いない。
話題とヒットの要因は?
竹内まりやの「Plastic Love」(1984年)が海外メディアで紹介されたことや松原みきの「真夜中のドア~Stay With Me」が世界数十か国の音楽配信サービスで1位にランクインしたことを皮切りにシティ・ポップ人気が急上昇。
なぜヒットしたのか?
音の作り方はデジタルで音楽を作成している。それまでのフォーク、歌謡曲とは違う音作りが中心になった。
今は音楽作成ソフトも数ありますが80年代はそこまで普及はしていなかった。私も「ガレージバンド」で曲を作ったことはあるがいとも簡単にできるのである。
代表的なアーティストで山下達郎はやはりパソコンで曲を作っていたと聞きます。「打ち込み」ってやつです。この方法はいろいろと音を重ねることで出来がるのです。
2/27日放送のNHK「あさイチ」の番組でやっていたが様々な要素がこの作り方で可能になったのだそうだ。まさに時代になじんだ製作方法です。
特徴
音域の要素、使われる音域が馴染む音域で製作されている。
シティポップは音の低域・高域がバランスよく全体的に使われている。クラシックなどは低域が多く高域は多くはない。
音響学的に低域、高域のバランスが全体的にまとまっている。音の構成が「川のせせらぎ」などの自然の音にマッチしている。
特徴
リズム要素、リズムが心拍数に近い。人間は自然と外部の音に合わせようとします。
自然にリズムに乗れるということです。このリズムが今とマッチしているといわれています。テクノやクラシックは少しリズムがちがいます。合わせにくいリズム感なのです。
特徴
これも「あさイチ」のネタですが歌詞にも要素があると言うことでした。アイドルたちが流行っていたころの歌詞は「私、あなた」だったそうです。演歌、歌謡曲は「俺、おまえ」。
80年代シティポップ時代は「僕、君」。歌詞によく使われていた言葉だそうです。
他に ローファイ(ハイファイの逆)だからいいんだという声もあります。デジタル時代で音が非常にクリアになり高音質・高解像の音ではなく低温室・低解像が受けているというのです。
いわゆるデジタル疲れからの脱出が好まれているということでしょう。
ハイレゾが普通になった今ですから回帰する気持ちもわかります。CDよりアナログレコードが再ブレイク、好きというのもこの辺にあります。
最近はアナログレコードの売り上げも好調と聞きます。年間3億円だった売り上げが今では20億円を超えたようです。
最近では「吉田拓郎」もアナログレコードを新作CDとセットとしてリリースしています。「大瀧詠一」は少し前からCD版とセットBOX売りしています。
カセットテープへの需要の高まりも同じかもしれません。近年は著名なアーティストも続々とカセットテープで作品を発表しています。たとえば2020年には、レディ・ガガのアルバム「Chromatica」や、セレーナ・ゴメス「Rare」などがカセットテープでリリースされ、好セールスを記録しました。
ネット環境の普及、音楽的回帰、様々な変化がシティポップが受け入れやすい土壌を作りあがったと言うことでしょう。
シティポップの生みの親
シティ・ポップのミュージシャンとして不動の人気を築いた山下達郎・竹内まりや・大瀧詠一。他に松任谷由実、南佳孝、吉田美奈子、角松敏生、稲垣潤一、杉真理、細野晴臣、加藤和彦など。
竹内まりやは歌手になるつもりがなかったといいます。口説いてスカウトし説得してデビューさせヒット曲を量産しました。
竹内まりやは通訳の仕事をしようとしていたのでこのスカウトでの話がなければ歌手・竹内まりやは存在しなかったのです。
また、70年代に売れないマニアックなミュージシャンだった大瀧詠一。全くやる気のない大瀧詠一を若者向けリゾートミュージックを作るよう提案した。
大瀧詠一は「縁」を大切にする人。「A LONG VACATION」制作時に「はっぴいえんど」解散以来の「作曲:大瀧・作詞:松本」コンビの復活を持ちかけ出来たのが名盤「ロンバケ」です。
この転機が無ければ「ロンバケ」はおろか、松田聖子の「風立ちぬ」や森進一の「冬のリビエラ」といったヒット作も生まれなかった。
これのアーティストの曲を毎週かけ続けたのが高視聴率番組の「オレたちひょうきん族」です。毎週番組のエンディングにシティポップの代表曲が掛け続けられていました。
- EPO「DOWN TOWN」「土曜の夜はパラダイス」「涙のクラウン」
- 山下達郎「パレード」「土曜日の恋人」
- 松任谷由実「土曜日は大キライ」「SATURDAY NIGHT ZOMBIES」「恋はNo-return」
ことごとく、シティ・ポップ系ミュージシャンによる作品です。
山下達郎と 松任谷由実も間違いなく「オレたちひょうきん族」によって人気を押し上げられました。EPOは「オレたちひょうきん族」がなければマイナーなシンガー・ソングライターのままだったかもしれません。
シティ・ポップを大衆の耳にすり込み、山下達郎やユーミンの知名度を押し上げた番組でした。
代表的アーティスト
山下達郎、松任谷由実、南佳孝、吉田美奈子、角松敏生、稲垣潤一、杉真理、細野晴臣、加藤和彦
他にもいっぱい。キリがないのでこの先は音楽アプリでお好きな曲を選んでみてください。
今後の傾向
2020年ころから起きた事柄を見ただけでもかなり異様な盛り上がり方をしているのがわかる。
こうした現象を日本の国営放送がニュース番組でも紹介し日頃から日本語のポップスに親しんできた我々も、もう少し細かくシティポップを聴き直してみると新しい発見がありおもしろいかもしれない。
山下達郎や松任谷由実など1970年代から80年代に日本で人気だった「シティポップ」がいま世界中で大人気となっている。
「YouTube」の台頭で日本人の知らないマニアックな楽曲を海外のアーティストが発見できるようになった。
今後日本語のシティポップが全米1位になることもあり得る。