2025年4月、M-1グランプリを連覇した令和ロマンの髙比良くるまさんが吉本興業とのマネジメント契約を終了し、フリーとして再出発しました。
相方の松井ケムリさんは吉本に残留し、コンビは史上まれにみる“二拠点マネジメント”体制へ移行します。
本稿では契約解除の経緯を整理したうえで、この新体制がもたらす業界的インパクトと、芸人契約モデルの進化について考察します。
髙比良くるま プロフィール
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芸名 : 髙比良 くるま(たかひら くるま)
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本名 : 髙比良 直樹(たかひら なおき)
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生年月日 : 1994年9月3日(現在30歳)
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出身地 : 東京都練馬区
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血液型 : O型
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身長/体重 : 173 cm / 70 kg
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コンビ : 令和ロマン(ボケ担当・立ち位置は向かって左)
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最終学歴 : 慶應義塾大学文学部中退(本郷中学・高校卒)
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NSC : 東京校23期首席卒業
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主な受賞歴 :
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M-1グランプリ2023・2024優勝(史上8組目の連覇)
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第45回ABCお笑いグランプリ2024優勝
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Forbes JAPAN「30 UNDER 30 2024」選出
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趣味・特技 : ビールとベーコン、横浜DeNAベイスターズ応援、美容コスメ、ラグビー経験(フランカー)
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東京都練馬区に生まれ、本郷中学・高校時代はラグビー部でフランカーを務めるなど運動部で鍛え上げられました。その後、慶應義塾大学文学部に進学し、お笑いサークル「お笑い道場 O-keis」で後輩だった松井ケムリさんとコンビを結成。
2018年、NSC東京校23期に入り首席で卒業すると同時にデビューし、当初のコンビ名「魔人無骨」を新元号施行日に合わせて「令和ロマン」へ改名します。
デビューから5年目の2023年にM-1グランプリで初優勝、翌2024年には史上8組目となる連覇を達成し、一気に全国区の実力派コンビとして躍進。
同年にはABCお笑いグランプリも制し、本人はForbes Japan 30 UNDER 30に選出されました。
2025年2月、過去のオンラインカジノ利用を認めて自粛する騒動を経て、4月28日に吉本興業との契約を双方合意で解除。
松井さんは吉本所属を続けるため、令和ロマンは“吉本×フリー”の二拠点体制で活動を継続中です。
現在は個人でのYouTube配信やイベント企画を主軸に、新たな芸人契約モデルのパイオニアとして注目を集めています。
髙比良くるま“フリー転身”の背景
オンラインカジノ賭博への過去関与が2025年2月に報道され、髙比良さんは自身のYouTubeで利用事実を認め謝罪しました。
警視庁から事情聴取を受けたものの書類送検は見送られ、復帰準備が進むなかで吉本興業との信頼関係が揺らぎます。活動自粛中に公開した説明動画の内容やタイミングが会社方針と食い違い、最終的に双方合意のうえで契約を解除する判断に至りました。
ロンドンブーツやキングコングなど、コンビ片方が事務所を離れても活動を継続した前例はありますが、M-1王者クラスでのフリー転身は極めて異例です。髙比良さんは個人ブランドの毀損を最小化しつつ復帰を最速化する手段として、あえて無所属の道を選んだと見られます。
二拠点マネジメントが突き付ける運営課題
吉本所属の松井さんとフリーの髙比良さんが並立することで、劇場出演やテレビ収録ではキャスティング稟議・出演契約・経費精算が二重化します。
吉本劇場は自社タレントを前提にブッキングが組まれており、片翼がフリーになると出演料体系や著作権処理が複雑化し、スケジュール確定が遅れる恐れがあります。
制作現場では「劇場で見られる令和ロマンの本数が減るかもしれない」という声も上がっており、セルフマネジメントを担う髙比良さん側が迅速な書類対応と情報共有を行えるかが鍵となります。
その一方で、吉本側が外部パートナーとの共存ガイドラインを整備できれば、フリーと所属タレントのハイブリッド運用は将来的なモデルケースになり得ます。
芸人契約モデルの再定義
従来は専属マネジメント契約が主流でしたが、EXITなどが選択するエージェント契約を経て、髙比良さんは完全フリーへ踏み込んだ最前線に立ちました。
配信プラットフォームの台頭により、芸人は広告収益や投げ銭で直接収入を得られます。スポンサーはタレント個人のフォロワー数やコミュニティ力を重視し、案件単位で“指名買い”する動きが強まっています。
また、グッズ販売やオンラインサロンなどD2Cモデルの拡大で、事務所を介さずとも高い利益率を確保可能です。
髙比良さんは国内外の案件をゼロベースで組み立てられる立場となり、必要に応じて法務・経理を外注する“アメーバ型”の契約形態を実証していくでしょう。
スポンサー・ファン・若手芸人への波及
契約解除発表当日に活動再開動画を公開し、スポンサー説明会の準備も進める髙比良さんの動きは、炎上リスクを透明性で打ち消す戦略として注目されています。
クラウドファンディングを活用した自主ライブや、舞台裏を共有するオンラインサロンといった新収益源は、スポンサーにとっても話題性とブランド・セーフティを両立できる魅力的な選択肢です。
若手芸人にとっては「セルフIR能力」と「リスクマネジメント」が新たな必須スキルとなり、事務所は劇場・法務・営業などインフラ提供を強みにしたプラットフォーム型へシフトせざるを得ません。
結論
髙比良くるまさんのフリー転身と二拠点マネジメント体制は、芸能マネジメントのフレームを塗り替える先例となりました。
運営コスト増や調整業務の複雑化という課題はあるものの、配信経済圏の拡大とスポンサー行動の変化を背景に、柔軟な契約形態はますます必要とされています。
吉本興業が提示した「所属とフリーの共存」は、芸人が自らのブランドを軸に最適なパートナーを選び取る時代の到来を示しています。
令和ロマンが今後どのようにスケジュールを組み、ビジネスを開拓していくか──その歩みはお笑い界のみならず、すべてのクリエイターにとってリアルなケーススタディとなるでしょう。