都民の命を守る東京女子医科大学病院が、いま存続の危機に立っている。医師・看護師らの大量退職が続き、毎月2億円を超す赤字が出ている東京女子医科大学病院。名門病院の凋落を招いたとされるのが“女帝”理事長・岩本絹子氏(75)の経営方針だ。彼女の公私混同と、3つの「疑惑のカネ」について全貌を明らかにする。(文春オンラインより引用)
我々の命を預かっている名門の大病院が存続の危機に陥っている。あってはならない教育と病院の問題をクローズアップしてみる。
理事長“女カルロス・ゴーン 岩本絹子氏(75)
「疑惑のカネ」を告発した職員を懲戒解雇.この危機を招いたとされる女帝理事長.
若い看護師たちの大半は辞職
「入職した当時、女子医大の看護師であることが誇りでした。でも今はここで働いていることを恥ずかしくて言えません」
「自分が育てた若い看護師たちの大半が、辞めてしまったからです。将来に希望が持てないとか、労働条件や経営方針に納得できないという理由でした。経営陣が、働く職員を大事にしないことが報道で知れ渡っているので、求人を出しても、希望者が全然集まりません」
創立120年を超す名門である東京女子医科大学(東京・新宿)。中核を担う東京女子医科大学病院は、心臓、脳、消化器、腎臓移植などの分野で国内トップクラスの手術件数を誇り、日本の医療をリードしてきた。他の病院では対応できない難しい症例を引き受け、都民の命を守る最後の砦でもある。
1年で医師が97人減、看護師は162人減
「経営方針に反発して、優秀な人ほど女子医大に見切りをつけるように去っていきました。凄いペースで医者と看護師が辞めているので、これまでの医療の質は保てない状況です」
女子医大病院では、この1年間で医師が97人減(859人→762人)、看護師に至っては162人減(1195人→1033人)となっており、これが、現場に深刻な負担を与えている。
「経営方針に反発して、優秀な人ほど女子医大に見切りをつけるように去っていきました。凄いペースで医者と看護師が辞めているので、これまでの医療の質は保てない状況です」
2020年、女子医大が職員の「ボーナス・ゼロ」を宣言したことが話題になった。新型コロナによる経営悪化が理由だったが、他の大学病院は例年並みか上乗せの支給だったため、職員が猛反発。経営陣は社会の強い批判を浴びて方針転換したが、夏のボーナスは前年の半分、冬は前年の6割の支給で、定期昇給はゼロ。結果として2020年度の決算は、コロナ補助金もあった影響で、過去最高益となる約82億の黒字をたたき出している。
一部理事の報酬だけ、大幅にアップされていたことも判明した。文科省「役員報酬等調査票」によると、2020年に岩本絹子理事長が得た報酬は、前年から204万円アップの2710万円、丸義朗学長の給与は、303万円アップの1722万円だった。
女理事長 カルロスゴーン 岩本絹子 とは
岩本絹子氏は佐賀・唐津市の出身で、女子医大の創立者・吉岡彌生の一族である。現在75歳。1973年に女子医大を卒業して、8年後に東京・江戸川区に葛西産婦人科を開業、現在も院長を務める。大学教育や研究に関わった期間は短く、開業医としてのキャリアが圧倒的に長い。
2013年に女子医大に強い影響力を持つ、同窓会の「至誠会」会長に就任すると、翌年には女子医大の副理事長に就いて、経営の実権を握った。
2014年、女子医大で2歳の男児が鎮静薬を過剰投与され、死亡する医療事故が起きました。患者数が激減、補助金も大幅カットされて、赤字額は約61億円。経営危機に陥った大学の再建役として、白羽の矢がたったのが岩本絹子でした」
女子医大に凱旋を果たした岩本氏は、徹底したリストラとコスト削減を断行する。その結果、3年後には黒字化を果たしている。その剛腕ぶりから付いたあだ名は 「女カルロス・ゴーン」。この実績によって、岩本氏は女子医大で不動の地位を築いた。
身長150センチに満たない小柄な方ですが、威圧感は半端ない。ミスがあると大きな声で厳しく叱責されます。意に沿わない職員は左遷や降格をさせられるので、皆いつも萎縮していました。
岩本氏は自民党の二階俊博元幹事長と親しく付き合い、政治とのつながりも強めていった。そして2019年、理事長の座に就くと、最高意思決定機関である理事会を“岩本派”のメンバーで固め、誰も反対意見を言えない体制を築いた。
岩本先生には、医師としての目立った臨床や教育、研究の実績はありません。それなのにトップに君臨しているのは、創立者一族の威光だと思います。
【疑惑のカネ1】直轄組織で水増し・架空請求の疑い
教授より2倍以上も給与が高い、出向の事務職員がいるらしい。2014年、岩本氏は東京女子医科大学の副理事長になった際、直轄の「経営統括部」を新設した。これによって、カネ・ヒト・モノ・情報の全てを岩本氏が掌握する体制を作ったのである。
翌年からその経営統括部に、自身が会長を務める至誠会(同窓会)が運営する至誠会第二病院から職員を出向させた。年間最大6人で、19年までの5年間の人件費総額は、実に約2.5億円にのぼる。
問題なのは、彼らの給与額である。「至誠会出向者給与戻し入れ 出金票」によると、最も高給な職員には月額150万円が支払われていた。一般事務職でありながら、教授クラスの2倍近い破格の待遇である。
この職員は、岩本氏の右腕として長年仕えている人物だという。他の職員も120万円、90万円と高給を得ている。経営再建中だった女子医大としては、随分と大盤振る舞いだ。
調べていくと、出向職員の給与には、巧妙なカラクリが隠されていたことが判明する。
Aさんの場合、女子医大は至誠会に月額120万円を支払っていたが、至誠会からAさんに支給されたのは、月額約20万円から40万円。最大月100万円の差額分が、どこかへ「消えていた」のだ。
また、女子医大は至誠会に対して、出向職員の夏のボーナスとして18年は807万円(6人分合計)、19年は855万円(同)を支払っていた記録がある。だが、Aさんの銀行通帳にボーナスの入金は見当たらない。
経営統括部に、出向職員が6人いた時期はありません。実際は2人から3人でした。 つまり、勤務していない出向職員の分まで“架空請求”された可能性がある。
出向職員の給与を出す女子医大と受け取る側の至誠会、この両方のトップを岩本氏が務めている。これは私立学校法で禁じている、「理事の利益相反取引」にあたる可能性が高い。
【疑惑のカネ2】元宝塚スター親族企業に1億円
宝塚歌劇団で主役を務めるトップスターには、並外れた経済力で支えるパトロン=通称「おばさま」が存在する。実は、月組の元トップ・彩輝直の「おばさま」は岩本氏だった。
“第二の疑惑”は、この元タカラジェンヌ親族企業、株式会社ケネスとの公私混同の契約である。
女子医大とケネス社の「業務委託基本契約書」によると、契約期間は2020年4月1日から22年12月31日とある。経営統括部の業務支援、理事長秘書業務全般として、報酬は月額385万円。21年3月からは岩本氏の専属運転手の費用が加わり、月額451万円になった。今年4月分までに、ケネス社に支払われた報酬総額は、実に1億円を超える。
ケネス社と契約するには稟議書が必要になるが、この書類もなかったという。
ケネス社代表取締役の妻は元タカラジェンヌ・彩那音
ケネス社の設立は、2012年。登記簿の「目的」欄に記されているのは、不動産売買、コンピュータシステムの企画、芸能タレントの育成・マネジメントなどが占める。病院運営とは縁遠い業種にみえるが、女子医大との接点はない。
単純に同社代表取締役B氏の妻は、元タカラジェンヌの彩那音(あやなおと)と判明した。長年に渡って岩本理事長が贔屓にしている、元月組トップ・彩輝直(あやきなお)の実妹である。つまり、岩本氏は、プライベートで親交が深い女優の親族企業と1億円超の取引をしていたことになる。
【疑惑のカネ3】一級建築士に給与と謝礼の「二重払い」
女子医大は、経営が厳しいとして人件費を抑える一方、新病院の移転や病棟の建替えを次々と進めている。そこには数百億円規模の資金が動く。
第三の疑惑”は、大型建築に絡んだ嘱託職員への給与と多額の謝礼の「二重払い」だ。
2016年4月から、女子医大は一級建築士・C氏を非常勤嘱託職員として雇用した。同年3月、都内の大手設計事務所を定年退職した人物である。
C氏の給与は、週2日程度の出勤で月額32万円だったが、その後は月額60万円前後で推移している。ただし、給与とは別にC氏個人に、18年7月から22年2月まで「建築アドバイザー報酬」が支払われていた。総額は2.5億円で、一級建築士とはいえ、個人の報酬額としては破格だ。
3つの疑惑
以前に疑惑を受けて内部告発が行われた。しかしこの内部告発は警察、ほか機関に無視された。内部告発を行った職員はすぐに懲戒解雇になっている。
二階堂議員、など政治家とも強いパイプを持つ理事長の影響なのか?。なんだかの強い力が動いたのは間違いない。
東京国税局は秘密主義が徹底しており、調査状況の全容は明らかにされていないが、再び女子医大の調査に入った。医師や看護師の大量退職が止まらず、女子医大の経営基盤そのものが揺らいでいる中、東京国税局によって「疑惑のカネ」の流れが解明されるのか、次回に続きます。